悲しい酒

悲しい酒
 作詞石本美由起、作曲古賀政男による、美空ひばりの代表曲のひとつして知られている。 145万枚を売り上げるミリオンセラーとなり、美空ひばり全シングル売上の歴代第3位となっている。元々は、1960年に新人歌手の北見沢惇の為に書かれた曲であったが、北見沢はヒット曲に恵まれなかった。その後、誰に歌われることもなく埋もれたままになっていたこの曲だが、埋もれさせるには惜しいと感じていた作曲者の古賀政男により、カバー曲であることを伏せたまま美空ひばりにレコーディングされ、1966年6月10日にシングルレコードとして発売されるに至った。ちなみに、オリジナル歌手である北見沢惇は、美空ひばりバージョン発売直後の1966年8月9日に夭折している(享年30)。
 ひばりが本楽曲をテレビなどで歌唱する時は、涙を流しながら歌うことが多く、ひばりは「涙を自由に操れる」とも言われた。ひばりは本楽曲を歌唱する時に涙を流すことが出来る理由について「あの時はね、小さいころのつらかった出来事を思い出しているのよ。」と後に語っている。
 曲間のセリフはひばりの要望で、作詞の石本によって一晩で書き上げられた。1966年の『第17回NHK紅白歌合戦』では紅組のトリとして本楽曲が歌唱された。


ひとり酒場で 飲む酒は
別れ涙の 味がする
飲んで棄てたい 面影が
飲めばグラスに また浮かぶ

(セリフ)ああ 別れたあとの心残りよ
未練なのね あの人の面影
淋しさを忘れるために
飲んでいるのに
酒は今夜も 私を悲しくさせる
酒よどうして どうして
あの人を
あきらめたらいいの
あきらめたらいいの

酒よこころが あるならば
胸の悩みを 消してくれ

酔えば悲しく なる酒を
飲んで泣くのも 恋のため

一人ぼっちが 好きだよと
言った心の 裏で泣く
好きで添えない 人の世を
泣いて怨んで 夜が更ける


歌:美空ひばり     作詞:石本美由起     作曲:古賀政男