東京だョおっ母さん

東京だョおっ母さん
 野村俊夫(作詞)、船村徹(作曲)で島倉千代子が通算150万枚を売り上げる大ヒット曲となった。同年に公開された同名の映画では島倉自身が主演を務め、母親役の賀原夏子の手を引いて東京見物させるものであった。映画もタイトルの通り東京が舞台になっていて、歌詞には二重橋、九段坂、浅草などの東京の名所が登場している。また、2番の歌詞で登場する「桜の下」とは靖国神社のことを指している。昭和30年は歴史的大豊作の年で、また好景気もかさなり、地方から東京見物にやってくる数も急増していた。また田舎から「金の卵」と呼ばれ集団就職で上京した若者にとっては、いつか故郷の親を呼び、東京見物させるのが夢だった。

 はとバスの東京都内定期観光バスでは、初代コロムビア・ローズの「東京のバスガール」と「東京だョおっ母さん」が、バスガイドが披露する歌になっている。
 「東京だョおっ母さん」というタイトルは、本楽曲が発売される前年の1956年に発売された美空ひばりのシングル「波止場だよ、お父つぁん」を聞いた島倉千代子が、同じような歌を歌いたいとの願望からつけられた。島倉千代子は美空ひばりを姉のように慕っていて、本曲と「波止場だよ、お父つぁん」はともに船村徹の作曲である。なお船村徹は栃木県は船生村出身で、母親に「一度、東京に来ないか」となんども誘い、返事は「今度行く」で亡くなるまで一度も上京しなかったことを悔やみ、そのことを悔やみ曲を作った。

 島倉千代子は同年、紅白歌合戦に初出場を果たしたが、曲目は「逢いたいなァあの人に」であった。その後、島倉は通算35回紅白に出場したものの、代表曲である本曲が紅白で歌唱されたことはない。後に島倉が再録音し、歌唱したものにはセリフが入っているが、発売当時はセリフなしであった。